EPSホールディングス 薬剤師アカデミー®専用フリーダイヤル (受付:平日9:00-18:00) 0120-357-380 主催:株式会社EPファーマライン
薬剤師アカデミー® 12月セミナーは認定薬剤師単位取得可能!

今回は永江先生のご厚意により、当日回答できなかった事前質問・リアルタイム質問にご回答頂きました。

※2025/9/18講演時点の情報

NO. 質問内容 回答
1 前立腺の抗がん剤はどのような症状を中心にモニタリングをしておけばよろしいでしょうか? 講演で述べたように、ARSIの副作用プロファイルがかなり違いますので、そこを押さえていただきたいと思います。主なものをざっくり挙げると、ABIは肝機能、血圧上昇、骨粗鬆症など、ENZは倦怠感や血圧上昇など、APAはなにをおいても皮膚障害、といった感じでしょうか。
2 抗アンドロゲン製剤のブレイクスルーが起きるのは何故ですか? ブレイクスルーの意味を取り違えていたらごめんなさい。去勢抵抗性を獲得している病態をも”突破できる理由”ということであれば、アンドロゲン受容体結合や核内移行抑止などにより、低濃度のアンドロゲンに対しても細胞複製反応が起きてしまう(去勢抵抗性癌特有の)状態を改善するメカニズムを持つから、ということになります。
3 前立腺がんの経過の基本的なモニタリングポイントが知りたいです。 基本的には、PSAと症状(特に排尿症状の悪化がないかどうか)のモニタリングでいいと思います。ただ、グリソンスコアが8以上や局所進行癌(T3以上)、転移がある症例といった、進行リスクが高い患者さんの場合には、PSA経過と真の臨床経過に乖離が生じることがあるので、6~12か月ごとの画像検査(CTや骨シンチ)が望ましいと思います。骨転移症例の場合には、ALPや尿中NTxも簡便なマーカーになると思います。
4 抗コリン作用の薬剤との相互作用はどこまで気をつけるべきでしょうか。治療が行われている場合、禁忌は全てアウトと考えるべきか教えてください。 いわゆる薬剤どおしの相互作用(増強、減弱)の問題は、臨床医の私は詳しくありません。が、恐らく、前立腺肥大症の有症状か治療薬(サプリ)処方がされているケースが一番このことに悩むのではないでしょうか? どこまでいっても、やはり優先度で対応を分けるしかないというのが自分の答えです。優先度が高いと思われるケースの多くの場合は、慎重なモニタリング下にGoでよいはずです。ただ尿閉経験者の場合だけは、再尿閉のリスクが高いので抗コリン作用薬の使用は避けられるだけ避けた方がいいと思います。
5 経口抗がん剤の使い分けはありますか? 講演内でお話しているように、併存疾患や副作用のプロファイルで適否を多少考える面があります。骨量低下やサルコペニアの方の骨折リスク増加を避けたい場合やCVD患者の場合は、ステロイド併用のアビラテロンは避けるケースもあると思います。また、アパルタミドでは、低体重患者で皮膚障害のリスクが高いという知見もあるので、体格情報で同剤を避けておく、というように、ディフェンシブな観点からの使い分けがあり得ると思います。逆に、臨床医の側には、アビラテロンやアパルタミドのmCSPCへの効果がより優れていると考える医師、逆にエンザルタミドやダロルタミドが副作用管理面から組みしやすいと考える医師など、基本的なスタンスが分かれていることも少なくありません。これらの点については、可能であれば、皆さんが実際に処方で関わる先生方と考えのすり合わせをしておくと、最良だと思います。
6 前立腺癌の検査の段階と診断、治療法について教えてください。 検査としては、局所診断には、直腸診(これが結構あてになります)、腹部+経直腸的超音波検査、そしてPSAの上昇傾向があるか、前2者の結果が陽性である場合には、経直腸的前立腺針生検がベストだと思います。陽性であれば、CT、骨シンチで全身検索して病期を確定し、局所治療/全身治療へ進みます。詳しくは、下記を参照いただければと思います。https://ganjoho.jp/public/cancer/prostate/index.html
7 今日のテーマからそれるかと思いますが、泌尿器科の先生にお聞きしたいことがあります。前立腺肥大症を疾患禁忌薬が多数あります。例えばCOPDを合併して、スピリーバなどの抗コリン薬の吸入薬が追加になった場合、薬剤師はどう対応したらよいのか?抗コリン薬以外の吸入薬に変更提案すべきなのか?逆にCOPDの患者が前立腺肥大症を合併した場合の対応もよろしくお願いします。 1)抗コリン薬以外の吸入薬に変更提案すべきなのか? →BPH薬処方医と意見交換する機会を作らないで、とした場合、COPD側の立場で最も安全な策を繰り出すとすれば、それがいいと思います。そのまま抗コリン薬吸入でいくなら慎重なモニタリング下で行う(尿の出方が悪化したらすぐ連絡するよう指示)ことにすべきと思います。 2)逆にCOPDの患者が前立腺肥大症を合併した場合の対応もよろしくお願いします。→発想は同じです。抗コリン薬吸入薬使用中に出が悪くなったら(頻尿が主訴である場合も含めて)、そこでα1遮断薬を併用というのも一つの策ですが、厳密にはやはり処方カスケードが発生しているも同然ですから、許されるなら別の吸入薬への変更が筋かと思います。そうでない状況の場合には、α1遮断薬併用か泌尿器科へのコンサルテーションか、がベターだと思います。
8 注射時の疼痛対策として、ヒルドイドやステロイド軟膏の塗布とありましたが、注射前に塗布でいいのでしょうか?どのくらい前に塗るのですか? ヒルドイドは可能であれば、3日前から注射予定部位に径10cm範囲で開始し痛み消退まで継続、ステロイド軟膏は注射直後から消退まで継続、としています。
9 前立腺肥大の症状は、そのまま前立腺癌にもあてはまるのですか?前立腺肥大があると前立腺癌のリスクもあると捉えて良いのですか? 前立腺肥大症の症状は、前立腺の中心部を走る尿道のまわりの組織が肥大することを契機に発生します。それに対して、癌の多くは中心部(尿道付近)から遠い、辺縁部分から発生するため、一定の進行期までは無症状です。つまり、排尿症状がある場合には、前立腺肥大症か、またはかなり局所進行している前立腺癌のいずれかを疑うことになり、その観点も含めて初診時にPSA採血を行うか、直近の検診PSA値を確認することがほとんどです。前立腺肥大症が前立腺癌のリスクになるかという点では、ならないという理解が一般的です。
10 桂枝茯苓丸で発疹が出た場合における、他の漢方薬を教えて下さい。 桂枝が入っているもの=茯苓丸以外では加味逍遙散を多用しています。その2剤でよい経過が得られない場合には、適応外使用となりますが、SSRIやSSNIを使うことが多いです。漢方治療に明るい医師、薬剤師の方々は、ほかにも複数の漢方薬の使用経験をお持ちかと思います。
11 カソデックス(+リュープリン等)の継続でPSAが安定してる場合、薬を何年間位継続するのでしょうか。患者が高齢であっても特に身体的問題が無ければ、継続服用となるのでしょうか。一旦中止しPSAがその後上昇してきた場合、薬再開の目安や治療薬の選択はどのように考えればよいのでしょうか この話はとても大事な話で、多くの臨床医が後回しにしてきたことだと思います。こういう話の答えに一番近い、必要な要素がACPであるはずです。病状/PSAが数年以上安定している場合(例えばPSAが測定感度以下を維持している、など)に、残りの人生で何を優先するか、そのことを受けて、一旦治療を休止あるいは終了するか、考えていいと思います。あるいは、今回のセミナーで最後にチラっと触れたように、フレイル、サルコペニアを併発している方の場合には、特に投薬中断を考える機会になると思います。幸いなことに、前立腺癌の場合にはPSAという優秀で信頼度の高い腫瘍マーカーが味方としていてくれるので、これをモニターして●●以上に上がったら投薬再開する、といった相談がしやすいですし、その手法は「間欠的ホルモン療法」として国際的に(ガイドライン的にも)標準的対応の一つとして認知されています。具体的にPSAがいくつ以上になったら、というのは本当にきまりがなく、経過次第です。PSA>1.0で、という方もいれば、もっともっと甘く5~10以上としてもさほどの問題のなさそうな方もいますね。
12 前立腺肥大の患者に生活指導として、刺激物を避けてくださいと言っています。これが正しいのか、他にも注意すべき指導があれば教えてください。 前立腺肥大症には、慢性前立腺炎が併存する場合が結構多くあります。慢性前立腺炎の主たる訴えは、排尿系の症状というよりも、会陰部痛、精巣部痛、下腹部痛(特に貯尿時)、ペニス部痛が多くみられます。これらの訴えのある方の場合には、慢性前立腺炎の生活指導が重要といえます。
具体的には、扶桑薬品の提供する同病態のHPがとても参考になるのでぜひ参照ください。(https://cpcpps.jp/daily.html)上記のような炎症症状をスクリーニングするのに非常に便利な問診である前立腺症状スコア(NIH/CPSI)もぜひ一度使ってみてはいかがでしょうか。
13 ホットフラッシュで使用する、SSRIは主になにでしょうか? 主たるSSRI使用薬はパロキセチン(パキシル)、フルボキサミンマレイン酸(デプロメール)を使っていた時期もあります。適応外使用である点にはご留意願います。
14 アパルタミドを服用中皮疹が出現し、抗アレルギー薬で改善した後も継続服用することは予防になるのでしょうか?患者さんが用心のため服用希望されていて併用しています、現在皮疹ありません。 アパルタミドによる皮疹が軽症の場合には抗ヒスタミン薬も推奨薬にあげられていますが、その再発予防効果について言及・検証されたものは存じておりません。分子標的治療薬の場合、発生機序的にはやはり減量休薬が原則で、発生時の対症療法の域を出ないように思われます。ただ、本年の第112回日本泌尿器科学会総会(福岡)で小生が発表した同じセッションで、ヘパリン類似物質塗布でかなり予防効果があるとのご発表があり(メディカルトリビューンにも取り上げられていました)追試・検証が望まれます。
15 ザイティガ中止後もプレドニンが続いているケースの患者さんがいます。これはどのような理由で継続になっていると理解したら良いでしょうか? ステロイドは、そもそも昔は単剤でもCRPC進行期に多くは症状緩和として一定の延命効果が経験されているケースが多いことを背景に、ザイティガ開始時に併用開始したものを中止しにくい状況になっていることが多いように思われます。ザイティガ中止はPDか副作用での休止で、新たな癌治療は困難な状況でしょうから、そこでステロイドまでオフにすると急激な終末期進行を覚悟せざるを得ないからではないかと推察します。
16 入院中に持参薬の継続でビカルタミドを使用している患者さんには看護師さんにどのような曝露対策をしていただく必要がありますか? 「発がん性・変異原性・催奇形性」が危惧されるハザーダス・ドラッグ(Hazardous Drugs)としての条件に厳密にあたる点がビカルタミドにあるのかどうか正確にはわかりませんが、同剤のジェネリック製剤の一部の添付文書には「本剤の有効成分は曝露によって健康への有害な影響をもたらす恐れがあります。崩壊・懸濁あるいは粉砕を行う場合は、手袋やガウンといった個人防護具を用いるなど、曝露対策を行うことを推奨します。」との記載があるようですが、病棟での看護師等の業務中はマスク・手袋着用されていると思われますので、普通錠・OD錠等の粉砕していない錠剤のままであれば、まず曝露による健康への有害な影響は発生しにくいと考えます。粉砕時”の曝露には注意する、という認識だけ共有するようにしておくのがよいのでは、と思います。
17 PSA値が低い(0.04)のにイクスタンジが使われることはあるのでしょうか?転移はなく、イクスタンジの処方は初めてです。 真に転移がない状況だとしたら、mCSPCとしての処方背景ではないわけですから、残る可能性は、PSAは異常に低いのに局所再発所見が何かしらある場合、というnmCRPCのケースしかないと思います。でも、それにしてもPSAが低すぎる印象が強いですので、担当医との情報共有を申し出ていただくのが最良と思います。