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薬剤師が知っておくべきアトピー性皮膚炎の薬物治療

講 師
江藤 隆史先生
江藤 隆史(えとう たかふみ)先生 プロフィール あたご皮フ科副院長/東京逓信病院皮膚科客員部長/
日本臨床皮膚科医会会長
昭和52年東京大学工学部計数工学科卒業後、昭和59年3月東京大学医学部医学科卒業。東京大学医学部皮膚科、関東中央病院皮膚科、ハーバード大学病理学教室研究員を経て、東京大学医学部皮膚科講師・病棟医長、東京逓信病院皮膚科部長、同病院副院長などを歴任し、平成31年4月より現職。日本臨床皮膚科医会会長、東京大学皮膚科教室同窓会会長。医師向けの「臨床力が高まる皮膚科診断クイズ」(学研プラス、2021年)」などから一般向けの「子どものアトピー性皮膚炎 正しい治療法 (健康ライブラリーイラスト版)」(講談社、2016年)まで著書多数。
  • Q1 ステロイド外用薬の使い方を説明する際のポイントは? A1 ステロイド外用薬は、炎症をしっかり抑えるために「十分な量を、十分な期間使うこと」が非常に重要です。
    「ステロイドが効かない、塗ってもどんどん悪くなる」と訴える患者さんは、薄く擦り込んで塗っていることがほとんどであり、使用量の目安をしっかり説明することが大切です。
    使用量の目安は、手のひら2枚分の広さの皮膚に対して、1FTU(フィンガーティップユニット、約0.5g)を塗布するのが適量とされています。1FTUとは、成人の人差し指の先端から第一関節までの長さにチューブから出した量です。
    ただし、チューブの口径などによって多少の違いがありますので、あくまで目安であり、そのくらい「多めに塗布しよう!」という“合言葉”と捉えてください。
    患者さんには、1TFUの考え方とともに、「ティッシュが貼り付くくらいのべとつきを目安に、しっかり塗ってください」と説明すると、イメージしやすくなると思います。
    塗布量の指導は、繰り返し行うことが大切です。塗り方の理解が不十分なことが多いので、薬局でも、塗布量の説明とともに「十分な量を継続的に塗布することが治療の鍵」であることを定期的に伝えてもらえるといいでしょう。
  • Q2 患者から「薬はいつまで使うの?」と聞かれた場合、薬剤師はどのように答えるのがよいでしょうか。 A2 患者さんを対象とした調査では、アトピー性皮膚炎の治療において、医療者に最も望むこととして「いつまで塗り続けるべきか指導してほしい」と回答した人が3割を超えており、これは患者さんの大きな関心事となっています。実際、薬局でも相談を受けることが多いでしょう。
    最も重要なのは、患者が自己判断で外用薬を中止しないようにすることです。自己中止は炎症の再燃リスクを高め、症状を長期化・悪化させる要因となり得ます。
    アトピー性皮膚炎では、症状が落ち着いて皮膚が一見正常に見えても、実際には組織内に炎症細胞が残存し、再燃しやすい状態が続いていることがあります。この「潜在的な炎症」が残っている時期には、ステロイド外用薬などの抗炎症外用薬を間欠的に使用して寛解を維持する「プロアクティブ療法」が推奨されます。
    プロアクティブ療法は、炎症が再燃してから使用する「リアクティブ療法」と比べて、再燃を抑制しやすく、結果的に外用薬の総使用量を減らせる可能性があります。特に、再燃を繰り返す症例では重要な治療戦略と考えられます。
    患者さんには、症状が改善しても皮膚の内部には炎症が残っていること、そして再燃を防ぐためには治療の継続が不可欠であることを説明してください。医師の指示に基づき治療を続ける意義を丁寧に説明し、患者さんの不安や疑問に対応し、寄り添いながら治療の継続をサポートすることが求められます。
  • Q3 ステロイド外用薬と保湿薬が処方されている場合、どちらを先に塗るのがよいのでしょうか。 A3 保湿薬とステロイド外用薬の塗布順序については、これまでの報告から、どちらを先に塗布しても効果や安全性に有意な差はないと考えられています。
    実際には、塗布面積の広い保湿薬を先に全体へ塗布し、その後にステロイド外用薬を病変部に限定して塗布する方法が指導されることが一般的です。ステロイドを先に塗布してから保湿薬を重ねると、ステロイドが本来不要な部位にまで広がってしまう可能性があるためです。
    しかし、塗布量が増えるとアドヒアランスは低下しやすく、保湿薬を先に塗るルールでは、疲れて帰宅した際などで、保湿薬だけを塗布してステロイド外用薬を省略してしまうケースも想定されます。そのため、まず抗炎症薬であるステロイド外用薬を塗布するよう指導する医師もいるでしょう。
    塗布順序には明確な優劣はありませんので、患者の性格や生活習慣、アドヒアランスの状況に応じて柔軟に指導方法を調整することが重要です。
※2025年7月31日の薬剤師アカデミーでのご講演を基に作成したQ&Aです。
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