今回は味村先生のご厚意により、当日回答できなかった事前質問・リアルタイム質問にご回答頂きました。
NO. | 質問内容 | 回答 |
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1 | いくつかの内服薬を併用していても、毎日浣腸をしないと便通がひどくなる患者様がおられますが、治療方法が間違っているのでしょうか? | 浣腸しないと便が出ないということは、大腸通過遅延型便秘ではなく、便排出障害である可能性があります。便排出障害であれば、内服薬は有効ではないので、内服薬で治療しようとしているのであれば「治療方法が間違っている」可能性があります。便排出障害に対する初期診療は、浣腸や座薬なので、浣腸は治療法として正しいですが、浣腸してまで毎日排便する必要はなく、浣腸のノズルによる直腸損傷を避けるために、週に2~3回に制限した方がよいです。それでも毎日浣腸しないと気が済まないという患者さんは、浣腸に対する精神依存状態になっている可能性があるので、便を排出するのに本当に浣腸が必要なのか、つまり自力で排出する能力が本当に無いのか評価するために、排便造影検査が必要です。 |
2 | 下剤は自己調節可とされることも多いが、どのように調節してよいかなど具体的に指示されていない患者も中にはいる。そういった患者に対してどういうアドバイスをしていくべきか。 | 講演中に「下剤使用の4原則と3推奨」として示した通りです。非刺激性下剤を毎日内服して,排便回数を1回/2日~2回/日,便性をブリストル便性状スケール3~5になるまで、種類や量を増加・調節し,調節できるまでは、刺激性下剤をレスキューとして使用します.刺激性下剤を内服するルールは、「排便の無かった日の眠前にセンノシドを2T頓服し、翌日排便があったら刺激性下剤は内服しない。センノシドを2T内服しても翌日排便がなければ、その日の眠前に3錠内服し、4錠までの増量を許可しておく。」です。 |
3 | 便秘予防の食生活と、運動で、何か適切なアドバイスを教えて下さい 便秘の基準は、人それぞれだと思いますが、自分で食生活に無頓着で、薬に頼る患者さんが、最近、多く感じます。 | 食物繊維摂取量が1日20g以下と少ないことが原因で排便回数が減少している便秘(大腸通過正常型便秘)は、食物繊維を20~25g/日摂取するように栄養指導してください。食物繊維を20g/日以上摂取していても排便回数が少ない大腸通過正常型便秘や軟便でも排便困難・残便感を訴える便排出障害は、食生活の改善では便秘症状は改善せず、下剤や便排出障害の原因に応じた治療が必要です。食生活の改善で便秘症状が改善するのは、便秘症を訴える方の中の約4割りです。規則正しい食事や食物繊維の豊富な食事は、便秘症の予防や治療のみならず、健康で長生きするために重要ですが、全ての便秘に有効なわけではありません。 |
4 | 腸閉塞の有無が不明の場合、下剤についてどうかんがえたらいいですか。また腸閉塞を含めて下剤の使用を控えたほうがいい症状があったら教えて欲しいです。 | 本当の「腸閉塞」であれば、患者は嘔気があったり嘔吐し、排ガスも停止します。たとえ高度の便秘症でも、便秘症であって腸閉塞でなければ、嘔気や嘔吐はなく、排ガスもあります。 嘔気もなく嘔吐もしていなければ、「腸閉塞」ではありませんので、排便回数が少なければ下剤を内服して結構です。逆に、嘔気や嘔吐があれば、下剤を内服せず、病院に行った方が良いです。 |
5 | 整腸剤(ビオスリー等)は便秘に効果は期待できるのでしょうか。また便秘に整腸剤を使う場合どのような便秘に対し使用が推奨されるのでしょうか? | 整腸剤は、軽度の大腸通過遅延型便秘症に有効ですが、即効性はないので、長期にわたって気長に内服する必要があります。中等度以上では、整腸剤では不十分なので、下剤が必要です。 |
6 | マグミット服用中の方が嗜好品として牛乳を摂取する場合、ミルクアルカリシンドロームを起こさない程度の牛乳の量はどのくらいが望ましいですか? | ミルクアルカリシンドロームを気にしたことはないので分かりませんが、常識程度の量(500ml以下/日)であれば大丈夫だと思います。 |
7 | 腎機能が悪い方でも酸化マグネシウムを処方されている方がいます。推定Ccrが一桁です。モビコールやラグノスを提案しましたが、Mgの量が半量に減量されました。医師がMgを選択するのは何故なのかが知りたいです。 | ガイドライン上、酸化マグネシウムは、「クレアチニンクリアランスが30mL/min未満の場合は禁忌」なので、「推定Ccrが一桁」であれば、酸化マグネシウムを投与してはいけません。それでも「医師がMgを選択するのは」、便秘診療に関して無知か無関心だからだと思います。高Mg血症に関する注意喚起の文書を患者さんに渡して、それを患者さんから医師に渡すように伝えるのが良いと思います。それでも、その医師が、「推定Ccrが一桁」の患者さんに酸化マグネシウムを処方し続けるようであれば、危険な医師なので、医師を変えるように患者さんにアドバイスしてあげた方が良いです。現在は、酸化マグネシウム以外の非刺激性下剤の処方薬が5種類もあるので、腎障害の方に酸化マグネシウムを継続する必要は全くありません。 |
8 | 直腸がんで、直腸を全摘し、S状結腸を肛門に繋いでいる患者さんがよくおられます。肛門を残せた場合、ストマにならない様ですが、皆さん排便に苦しんでいます。本日のお話では、排出には直腸の働きが大きいようですが、この患者さんの場合、どのような形排出機能が働くのでしょうか。また、あまりにコントロールができない場合にはストマの増設が可能と聞きましたが、そういう事例はあるのでしょうか。例外的な質問で申し訳ありません。 | 直腸癌に対する肛門温存術後の排便障害は、低位前方切除後症候群と総称され、治療に難渋することが多いです。薬物療法としては、ポリカルボフィルカルシウム、ロペラミド塩酸塩、ラモセトロン塩酸塩を用いて便性の固形化を行って便失禁や頻回便を治療します。ただ、残便感や排便困難感では、レシカルボン坐剤で対応できる場合もありますが、治療は困難です。症状の主体が便失禁であれば仙骨神経刺激療法も有効ですが、残便感や排便困難感が主体であれば、保険適用外ですが、経肛門的洗腸療法を行うことはあります(当院では、臨床研究の枠内で施行しています)。それでも症状が十分に改善せず、患者さんが希望すれば、ストーマ造設術を行う場合もあります。 ストーマによるボディイメージの変化を受容できるなら、面倒な治療を受けるより、ストーマの方がQOLがはるかに良好です。 |
9 | 自閉症や知的障害で、精神科薬や偏食の影響で便秘になる子供に対して、どのような処方が良いでしょうか?小児科で処方されやすい、酸化マグネシウムは大きさや、口の中に残りやすい、などの理由で飲めないようです。 | 「偏食の影響で便秘」なのであれば、偏食を改善するのが理想的です。 「精神科薬の影響で便秘」であれば、薬剤性の大腸通過遅延型便秘症なので、処方は、原因にかかわらず、大腸通過遅延型便秘症と同じですから、講演中に「下剤使用の4原則と3推奨」として示した通りです。子供には、モビコールに保医発が適用されていないので、第1選択薬としてモビコールが使用可能で、効果も高いと思います。 |
10 | 下剤は自己調節可とされることも多いが、どのように調節してよいかなど具体的に指示されていない患者も中にはいる。そういった患者に対してどういうアドバイスをしていくべきか教えてください。 | 下剤の調節の仕方は、講演中に「下剤使用の4原則と3推奨」として示した通りです。非刺激性下剤を毎日内服して,排便回数を1回/2日~2回/日,便性をブリストル便性状スケール3~5になるまで、種類と量を増量し,調節できるまでは,刺激性下剤をレスキューとして使用します。 |
11 | 一般的に刺激性と非刺激性の位置づけ | 「刺激性と非刺激性の位置づけ」や使用方法は、講演中に「下剤使用の4原則と3推奨」として示した通りです。刺激性下剤を内服するルールは、「排便の無かった日の眠前にセンノシドを2錠頓服し、翌日排便があったら刺激性下剤は内服しない。それでも翌日排便がなければ3錠内服し、4錠までの増量を許可しておく。」です。 |
12 | 人口肛門の人は便秘になりますか? | 人工肛門の人も、食物繊維摂取不足が原因の大腸通過正常型便秘症や結腸蠕動能低下が原因の大腸通過遅延型便秘症にはなりますが、便排出障害にはなりません(回腸ストーマを造設した直後に、ストーマ排出障害を一時的に生じる人はいますが)。治療法は、人工肛門ではない大腸通過正常型便秘症や大腸通過遅延型便秘症と同じです。 |
13 | 糖類下剤は、体内に吸収されないため血糖値に影響せず、糖尿病患者さんにも使用できる、と記載されている書籍がありますが、ラグノス以外は電子添付文書の記載も気になります。ラグノス以外の糖類下剤を糖尿病患者さんへ使用される場合、先生のお考えをご教示頂ければ幸いです。 | ラグノス以外の糖類下剤を使用することはないので、分かりません。 |
14 | 高齢者に適した便秘薬で、服薬•金銭面で負担が少ないものを教えてください。 | 高齢者でも、便秘の原因分類と原因に応じた治療法としては、若年者と同じです。 金銭面で負担が少ないのは、酸化マグネシウムですが、高齢者は腎機能が低下していることがあるので、定期的な血液検査が必要です。 モビコールやラグノスは、内服回数が多いし、モビコールは溶かす必要があるので、服薬面で負担が少ないのは、アミティーザやグーフィスです。 |
15 | 絶食や食事量低下している患者さんはどの下剤がおすすめですか? | 「絶食や食事量低下している患者さん」の便秘は、大腸通過正常型便秘症なので、治療は下剤ではなく、食事栄養指導です。クローン病など何らかの理由で本当に絶食する必要があり、そのために排便回数が少ないのであれば、それは便秘ではありませんから、下剤は不要で、排便回数が少ないままで大丈夫です。便秘の定義を、「本来排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」としているのは、それが理由で、絶食のために、「本来排出すべき糞便」が大腸内に過剰に貯留していなければ、それは便秘ではありません。 |
16 | とてもわかりやすいお話しで勉強になります。後日復習させていただき、理解深めます。神経質な患者様が出ない出ないと話されているので、知識をバックボーンに、寄り添った話ができるようになりたいです。 | 正しく理解して頂けたようで嬉しいです。 「神経質な患者様が出ない出ないと話されている」症例は、大腸通過時間検査や排便造影検査を行うことで、「機能性腹痛・腹部膨満症」や「排便強迫神経症」と診断しています。これは、「本来排出すべき糞便」が結腸内や直腸内に存在しないにもかかわらず、「腹痛の原因はたまっている便だ」とか「便を出したいのに出ない」という方で、その場合は、大腸通過時間検査や排便造影検査を行うことで、「本来排出すべき糞便」を出せない本当の便秘なのか、出せているのに腹痛や排便困難感を訴え続ける「機能性腹痛・腹部膨満症」や「排便強迫神経症」なのかを鑑別します。 便秘症は、「不満」の症状なので、たとえ症状自体が改善しなくても、「寄り添った話ができる」だけで、患者さんの不満感は改善し(満足度は向上し)、それに伴ってQOLも改善しすることが多いです。「知識をバックボーンに、寄り添った話」をしてあげて下さい。 |
17 | グーフィスは、効果発現までに5.2時間といわれていますが、朝排便したい場合、どの食前にのむのがよいですか? | グーフィスは刺激性の要素もあるので、排便のタイミングに合わせて内服することは可能あるいは有用かもしれません。その場合、朝の排便に合わせたいのであれば、18~20時に摂取する夕食では、翌日の朝まで離れ過ぎているので、刺激性下剤と同様に、眠前に内服するのが良いと思います。グーフィスは、食前内服が原則となっていますが、それは、あくまで理論上だけで、食前でないと効かないわけではありません。朝に排便するタイミングに合わせることを重視するのであれば、食事とは無関係に、刺激性下剤として眠前に使用することをお勧めします。 ただ、グーフィスは、非刺激性の要素もあり、他の非刺激性下剤と同様、排便のタイミングとは関係なく内服するのが通常なので、朝食前に内服し、朝の排便は、目を覚ました覚醒刺激や朝食摂取による胃・結腸反射に任せるのが良いとは思います。 |
18 | 排便造影検査はどこで受けられますか?費用はどれくらいかかりますか? | 1つの県に1~2か所くらい、排便造影検査を実施している病院はあると思います。ネットで、「排便造影検査」で調べてみて下さい。 排便造影検査という保険点数はないので、注腸造影検査として請求し、撮影回数にもよりますが、最高でも1000点だと思いますから、金額として1万円で、3割負担なら3000円程度だと思います。 |
19 | グーフィス リンゼス モビコール アミティーザ 酸化マグネシウム の中から3剤~4剤併用する処方を出されることがありますが、種類を増やすことで効果があるものでしょうか。 | 種類を増やせば、当然、効果も高まります。ビーマスを使用できなくなった現在では、同時に使用できる非刺激性下剤は6種類です。 |
20 | 施設に入居の高齢者で、蓋のような硬便が出た後に下痢が続く方がいらっしゃり薬の調節に苦労されています。こういった方にはどのような処方が良いのでしょうか? | どのような下剤調整をしている方なのか分からないので回答が難しいですが、結腸に貯留している便の中で、肛門に近い便の方が、より長い時間、大腸内に停滞しているので、より多くの水分が吸収されて、より硬便になっているのは自然な現象です。したがって、長期間排便がなくて、刺激性下剤を使用した場合は、「蓋のような硬便が出た後に下痢が続く」のは、当然の現象です。その場合は、長期間便が出ない状態の後に刺激性下剤を使用するのではなく、毎日、非刺激性下剤を内服して、1回/2日~1回/日の頻度で、適度な硬さの便が出るように下剤を調節することをお勧めします。 |
21 | 精神科の薬剤師です。病棟では割とレシカルボン坐薬が使用されます。レシカルボン坐薬について使い方や注意点についてご教示ください。 | 精神科の患者であれば、薬剤性の大腸通過遅延型便秘症が多いので、内服下剤が必要な方が多いですが、直腸知覚低下のために直腸に便があるのに排便動作をせず、直腸糞便塞栓状態の方もいます。その場合は、便意に頼らない排便習慣訓練と、レシカルボンによる定期的な直腸の空虚化をお勧めします。すなわち、朝・夕食の30分後に、便意を感じなくてもトイレに行って排便動作をし、十分な排便があれば、それで良いですが、十分な排便が得られない場合は、レシカルボン坐剤を使用します。レシカルボン坐剤は安全な座薬なので、必要であれば1日に1~2個使用しても大丈夫です。 |
22 | 毎日排便があっても宿便のある方もいると聞きました。どのような状態なのでしょうか、また、治療や日常生活で気をつけることは何でしょうか。 | 「宿便」という用語は、私は使用しないので、何を意味していのか正確にはが分かりません。もしも、マスコミなどが時々使用している「宿便」のことで、大腸の中に一部だけ取り残されて「大腸の壁にへばりついている便」を意味しているのであれば、そのような便は存在しません。大腸粘膜は粘液で覆われているので、「便がへばりつく」ことは不可能です。 |
23 | 食事量が少なく、神経質な気がある腹痛を訴える高齢者(器質的問題がないと仮定)に対して、リンゼスは有効と考えられますか。 | 腹痛を訴える便秘症は、定義上は、便秘型過敏性腸症候群なので、高齢者でも若年者でも、リンゼスが有効な可能性は十分にあります。 ただ、「食事量が少な」いための便秘は、大腸正常型便秘症なので、リンゼスを含めた下剤は無効で、食事量を増やす食事栄養指導が適切な治療法で、薬物であれば、糞便量を増加させるポリカルボフィルカルシウムです。 |
24 | センナの長期服用で大腸が黒色化すると言われてますが、先生は問題ないと思われますか? | 「センナの長期服用で大腸が黒色化」するのは、大腸黒色症(大腸偽性メラノーシス)と呼ばれますが、病的意義はないので、黒くなっていること自体は気にする必要はありません。発癌とも無関係ですし、むしろ大腸内視鏡検査で小さい腺腫を発見しやすくなるので好都合です。 しかし、大腸黒色症が発生するようなセンナの連用・頻回使用は望ましくないので、非刺激性下剤を毎日内服して、センナを必要としなくなるような下剤調整をした方が良いです。 つまり、大腸黒色症自体に問題があるわけではなく、大腸黒色症が発生するような下剤の内服方法が問題です。 |
25 | アミティーザを朝夕服用されている92歳女性です。アミティーザかえてからはラキソベロンの使用は減っています。最近、寝る前におなかが動き出す。そうすると起きてトイレに行かないといけない。大変なのよとの話がありました。足元もおぼつかない方なので夜間のトイレに心配があります。アミティーザ1日1回に減らしたほうがいいのでしょうか? | 「アミティーザにかえてからはラキソベロンの使用は減っています」というのは良いことです。ただ、「寝る前におなかが動き出す。そうすると起きてトイレに行かないといけない。大変なのよ」というのは、確かにアミティーザが過量のようですので、減量した方が良いかもしれません。現在のアミティーザの内服量(12μgなのか24μgなのか)や排便回数、便性が分かりませんが、アミティーザ(24μg)1錠/回、1日2回で、排便回数が2回以上/日や便性がタイプ5以上と軟便なのであれば、1日1回に減らすか、アミティーザ(12μg)3錠、2x(2-0-1)や2錠、2xに減量してみるのも良いと思います。 |
26 | 塩分制限中の患者様にモビコールは投与控えた方がよいか、教えてください、 | モビコールは、塩分として吸収されないので、控える必要はありません。 |
27 | とても貴重なご講演ありがとうございました。酸化マグネシウム服用時でも水分摂取は効果的ではないですか? | 酸化マグネシウム服用時でも、水分摂取量を増やせば増やすほど、便秘症状が改善したり、酸化マグネシウムの効果が上昇することはありません。錠剤であれば、その錠剤を内服するのに必要な水と一緒に内服すれば十分ですし、細粒であれば、口内に細粒が残留しない程度の十分量の水で内服すれば十分です。酸化マグネシウムが胃に到達すれば、大量に分泌されている胃液や膵液と混じるので、口から摂取する水分量は、その効果に無関係です。 |
28 | 先ほど水分をいくら摂っても便秘は改善されないとのことでしたが、酸化マグネシウムは口から取り込んだ水分を腸まで運んで排便すると説明されていた気がします。酸化マグネシウムの場合でも水分を多めに摂っても意味がないと言うことでしょうか? | 「口から取り込んだ水分」以上に、胃液や膵液が分泌されているので、酸化マグネシウム服用時でも、水分摂取量を増やせば増やすほど、便秘症状が改善したり、酸化マグネシウムの効果が上昇することはありません。水分は、脱水にならない程度に摂取すれば十分で、便秘を改善するために摂取する必要はありませんし、無意味だと思います。「酸化マグネシウムは口から取り込んだ水分を腸まで運んで排便する」という説明は、腸管内の液体の供給源が、口から摂取した水分しかないという無知からきている誤解・思い込みだと思います。 |
29 | 今、咳の患者さんが多くリン酸コデインで便秘になったといわれますが、一時的な便秘への対応はどうしたらよいですか? | 一時的な便秘でも、「本来排出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」のために便秘症状で困っているなら、リン酸コデインが原因の薬剤性便秘による大腸通過遅延型便秘症に対して、下剤調整で治療した方が良いです。本当に一時的な便秘で、リン酸コデインの内服が終了して便秘症状が消失したら、下剤内服も一時的なもので終了すると思います。 |
30 | 先生はセンノシドとピコスルファートをどのように使い分けていらっしゃいますでしょうか?特別養護老人ホームではピコスルファートの定期服用が多い感じがします。 | 私は、基本的にセンノシドやプルセニドを錠剤でしか処方しません。ピコスルファートも錠剤があるので、錠剤であれば処方しても良いとは思いますが、わざわざピコスルファートにする必要性を感じないので、センノシドを2~4錠/回で、頓用処方しています。ピコスルファートを液剤で処方すると、15滴内服と指示しても、真面目に滴数を数えて使用する方は少なく、「ジャッ」と一気にコップに入れてしまって、どれだけ使用したか明確に分からないことが多いです。刺激性下剤は、効果が出ない時は全く効果がなく、効果が出る時は、はっきり出る、あるいは効き過ぎて下痢になるという効き方をするので、非刺激性下剤のように微調整する必要はないので、液剤で微調節する必要はなく、錠剤で2~4錠/回の使用方法で十分だと思っています。 |
31 | グァー豆分解物等は便秘にいかがでしょうか | グァー豆分解物は、食物繊維のサプリメントとして、食物繊維摂取不足が原因の大腸通過正常型便秘症には有効ですが、大腸通過遅延型便秘症や便排出障害には無効で、逆に症状を悪化させる可能性があります。 |
32 | 毎日、便が出ないといけないと思い込んでる患者さんがいますが、腹部膨満感や宿便を感じなければ、体質もあるので、毎日の排便は、なくても良いですね? | 排便は、毎日ある必要はありません。排便回数の頻度としては、週に3回から1日に3回が正常域なので、便秘症状がなければ、3日に1回あれば十分です。 |
33 | 本人が苦しさや不快感がなければ排便の間隔が空いていてもいいのでしょうか。1週間や10日出なくても平気という方もいらっしゃいます。 | 「本人が苦しさや不快感がなければ排便の間隔が空いていてもいい」ですが、通常は、健康的な食事(食物繊維を平均20g/日摂取など)をしていれば、「1週間や10日出なくても平気」ということは、ありえないと思います。健康的な食事摂取をしていて、「1週間や10日出ない」と、大腸内に過剰な量の糞便が貯留しますし、長期間にわたって貯留しているので肛門に近い便は硬便化して、正常な肛門でも排便困難で困るはずです。本当に、「1週間や10日出なくても平気」であれば、健康的な食事をしていない証拠なので、1週間や10日出ないと便秘症状で困るような健康的な食事をした方が、健康寿命を保つために良いと思います。 |